相模原市の障害者施設で19人が殺害されました。
犯人は元職員の23歳の男性とされています。さて、この事件はなぜ起きたのでしょうか。
幾つかの要因にわけられるのではないかと思います。
- 障害者や高齢者を含む社会的問題
- 犯人の病的な性格
障害者や高齢者を含む社会的問題
「わたしたちの社会は平等に人の命を扱う」という建前がありますし、多くの場合はそうです。その意味で犯人の手紙や言動から推し量ることのできる思想は間違っています。倫理的に狂った考えです。
しかし、現実はどうでしょうか?
障害者を巡る最近の動きに、「措置から契約へ」というものがあります。本人たちの契約によってサービスを選んでもらおうというという目的で、「自立支援法」が大きく関わっています。
障害者の自立を促すというのが目的のこの制度なんですが、入所サービスに関して言えば施設数が少ないためほぼ選択できません。しかもこの制度によって施設への収入は減っています(措置と違って障害の重さにより仕分けが行われたなどが理由)。
その他、重度障害者の場合は選択の意思確認が難しいなど様々な問題が出てきています。
簡単に言えば障害者を巡るお金は減っています。高齢者も同様ですよね。介護報酬の引き下げにより高齢者を巡るお金は厳しくなってきています。
受け取る人によっては「切り捨て」ととる人もいます。特に介護の現場ではそのような風潮です。
働く側にしても、介護分野にお金が出なければ、自分たちの給料に関わってきますから当然といえば当然です。
「国は一番弱いところから削っていく」
なんてことを言う人もいます。
犯人がそんな現場にいたことは無関係でしょうか?
「彼らは不幸しか産まない」そんな歪んだ思考を形成するのにこのことも影響しているような気がしてなりません。また、介護分野の人材不足は深刻です。ハローワークなどでは希望の職場がない場合、介護分野の仕事を勧めてきたりするのはご存知の通りです。
つまり、その他の業種で上手く行かなかった人が集まってくるのが介護現場です。
このニュースで、「よくこんなやつを2年も雇ってたな」と思いませんでしたか?
介護現場では多少おかしな人でも雇ってもらえます。
「早く常勤を増やさないと夜勤をする人がいない」
「今辞められると夜勤がまわらない」
と言った状況ですから、彼のような人物を非常勤から常勤にしたり、2年間も雇ったりするわけです。
犯人の病的な性格
個人的には犯人は、何らかの精神疾患があり「辞めさせられた腹いせ」に多くの理屈を妄想し、犯行に及んだのではないかと思っています。なぜなら彼の思想を実現するにはあまりに非現実的だからです。
ひとりひとりの被害者のことを思えば、大変に残虐極まりないことですが、彼の目的がこの人数で果たせるとは思えません。
しかも、次の行動を起こすことなく自首しています。
大風呂敷を広げた割にはあまりに稚拙な計画であるような気がしてなりません。
そうやって考えると、心の底には「辞めさせられた腹いせ」があるのではないでしょうか。
教師になりたいという夢を持ちながら、背中に刺青をいれるという矛盾した行為からも、欲求を我慢できないタイプの人なのでしょう。
そんな彼の勤務態度なども気になるところです。上にも書きましたが、入所者から理不尽な訴えを聞くことも多々あります。
それに対して中には語気を荒げる人もいますが、そんな人は当然ながら注意されます。
反省する人もいれば、反省しない人もいます。
そんな鬱憤は今回の事件に無関係なのでしょうか?この辺りの情報がもう少し欲しいところです。
想像の話ばかりですみません。
犯人の性格について最後にもう一つだけ書かせて下さい。
恐らく彼は別のことをしていても何らかの事件を起こしたのではないでしょうか。
そういう意味では本当に不幸でどうしようもない事件です。
まとめ
話題は少しそれますが、
ニュースなどで「高齢者がどんどん増えてきて国の財政は厳しくなってくる!!」という内容の報道をよく目にします。
じゃあ、高齢者が減れば財政は厳しくならないんじゃないか?という簡単な論理がここに成立してしまいます。
援助を受けなければならない人は経済的に何かを産むことはほぼあり得ません。それでも彼らの生命には価値があるとはっきり言えるでしょうか?
個人的な意見ですが、介護の現場で働いていない人の方が生命を尊んでいる気がします。
介護の現場は厳しい世界です。給料は安い仕事はキツい。時に理不尽な訴えにも耐えねばなりません。そんな中で入所者を見下すような言動をする人もたくさんいます。
介護職のわたし達にはゆとりが必要です。自分たちの仕事に誇りを持てるだけのゆとりが。
どんな条件でどんな環境ならゆとりを持って働けるかは人それぞれです。介護の職場はたくさんあります。同じ場所にこだわって消耗するより、少しだけ頑張って自分に合った職場を探してみるのも良いのかも知れません。